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プロテスタントとカトリックの違いを解説、何がどう違うの?

ライターの市(いち)です。

学生時代、私は音楽を専門で勉強していたのですが、その中でも一番苦労したのが音楽史です。

西洋音楽の大元と言っても良いのがキリスト教の「讃美歌」と「聖歌」で、そこから西洋音楽の歴史が始まります。

キリスト教に縁のない私たちは「讃美歌と聖歌ってどう違うの?」と思いますよね。

実はこれが、今回お話しする「プロテスタント」と「カトリック」の違いにあるのです。

仏教にも色々な宗派がありますが、キリスト教にも多くの教派(宗派)が存在します。

その中でも、大きな教派として「プロテスタント」と「カトリック」が挙げられますが、この2つは同じキリスト教でも内容に大きな違いがあります。

私自身が理解に苦しんだ2つの教派の違いについて、どう違うのかを分かりやすく紹介していきたいと思います。
 


 

カトリックに反発して生まれたのが「プロテスタント」

プロテスタントとカトリックにはなぜ違いがあるのか、まずは2つの教派が誕生した経緯からお話しするところから始めたいと思います。先に誕生したのは「カトリック」ですが、いつ始まったのかという年代は不明と言われています。カトリックは、イエス・キリストの弟子たちが作った「初代教会(初期キリスト教)」の流れを汲んでおり、当初はキリスト教の主流ともいえる教派でした。

それが312年に、当時ヨーロッパの一大勢力であったローマ帝国の皇帝・コンスタンチンがキリスト信者になったことで、カトリックはローマ帝国の国教として一気に広がっていきました。ところが16世紀に入り、ルターという人物を中心にカトリックに反発する人たちが現れます。

カトリックでは、自らの罪を軽くするためには教会が行っていた奉仕活動や改修などに必要な金銭を出すことが近道であると教えていました。1517年、当時の教皇・レオ10世は、サン・ピエトロ大聖堂の改修費用を集めるため、罪を軽くする「贖宥状(しょくゆうじょう、免罪符とも言う)」を売り出し、購入した者は全免償(全ての罪が許される)という布告をしました。

「許しをお金で買うのはおかしい!」と考えたルター達は、1529年に「抗議」という意味である「プロテスタント」という名の新しい教派を作りました。(他にも、ローマの国教になったことで教えに政治的要素が含まれるようになったことなど、色々な要因はありますが、この出来事が大きなきっかけだったと言われています)

キリスト教は、誕生してから多くの人たちがその考えに賛同したり、反発したりして様々な教派が生まれましたが、カトリックとプロテスタントは現在その中でも信者数の多い、大きな教派になっています。そのため、元々あったカトリックを「旧教」、新しく出来たプロテスタントを「新教」と呼ぶこともあります。
 

【ゆげ塾の5分でわかる「カトリックとプロテスタント」【お勉強デレッチョ】】
 

 

こちらの動画では、先ほど説明した歴史について説明されています。見ていただいてから続きを読んでいただくと、2つの違いがより理解できますよ。
 


 

プロテスタントとカトリック、大きな違いはこんなところ

先ほどは、プロテスタントとカトリックが誕生した経緯を紹介しましたが、次は具体的な内容の違いを紹介します。

●聖地の有無
聖地として有名なものに「エルサレム」やローマ教皇が居る「バチカン市国」などがありますが、これらはカトリックの聖地で、プロテスタントには聖地と言う概念はありません。そのため「聖地巡礼」を行うのもカトリック信者だけです。

ただ、プロテスタントでもエルサレムはキリストが信仰を広め、処刑・復活した土地として重要な場所であるという考えはあります。

●神父と牧師
キリスト教の聖職者の呼称として、「神父」と「牧師」がありますが、これは教派によって呼び方が異なります。カトリックが「神父」でプロテスタントが「牧師」です。そして、神父は男性のみ(女性は修道女)で生涯独身でないといけないのに対し、牧師は男女両方存在し、結婚も許されています。

また、カトリックの「神父」というのは聖職者の敬称であり、その中には細かい階級(職名)があります。階級は上から下記の通りです。

教皇→枢機卿→大司教→司教→司祭→助祭

 
カトリックは1人のローマ教皇をトップにピラミッド型に組織されています。これに対してプロテスタントには階級と言うものがなく、プロテスタントの聖職者=「牧師」のみとなっています。(大きな教会の場合は、主任牧師、副牧師などと使い分けていることもありますが、あくまで牧師であるという考えです)

●聖書の違い
カトリックもプロテスタントも同じキリスト教ですので、聖書の内容は同じです。しかし、カトリックには細かな注釈があり、教派全体で内容の解釈が統一されているのに対し、プロテスタントは注釈がなく、内容の解釈は個人の自由とされています。これも、カトリックは政治的要素を含み、組織として統一を図るためにできました。

●神や聖書の影響力の違い
キリスト教徒にとって神や聖書はとても重要なものであることは当然ですが、実は教派によってその影響力の順番が少し異なります。カトリックは、神→教会→聖書→信者となっており、プロテスタントは、神→聖書→教会・信者となっています。

こちらも政治的要素が含まれるようになったため、聖書よりも注釈を加えた教会(聖職者)が上になったという時代背景があります。

●ミサと礼拝、聖歌と讃美歌
他にもカトリックとプロテスタントで呼び方が違うものがあります。カトリックでは儀式を「ミサ」、歌を「聖歌」と呼び、プロテスタントでは儀式を「礼拝」、歌を「讃美歌」と呼びます。カトリックのミサとは、正確にはパンとぶどう酒をキリストの肉と血として信者に分け与える典礼のことで、その際に祈りの言葉をメロディに乗せて歌ったものが聖歌です。(最近ではカトリックの儀式全般がミサと言われています)

そのため、聖歌はメロディが違っても歌詞は典礼の祈りの言葉が使われおり、どの曲も同じです。これに対し、プロテスタントではパンとぶどう酒はあくまでキリストの象徴でしかなく、「聖餐式(せいさんしき)」と呼ばれる同様の儀式があるものの、あまり形式にはこだわらず、月の第一日曜日だけに行われる場合が多いです。

また、讃美歌も聖歌とは違い、祈りの言葉ではなく神を称える言葉が歌詞に使われているため、歌詞は千差万別です。また、ミサと礼拝の内容にも違いがあります。カトリック(ミサ)では、宗教的な儀式の時間が多くを占めるのに対し、プロテスタント(礼拝)では神を讃える、祈りを捧げる、聖書朗読と聖書説教の時間が大半を占めています。

●教会と十字架の役割
教派が違っても、教会は同じなのでは?と思いがちですが、実は細かいところに違いがあります。まず、教会全体の見た目や内装です。カトリックはとてもゴージャスで、中には彫像などが多く飾られている教会が多いのに対し、プロテスタントはとてもシンプルで中も十字架とパイプオルガンだけという教会が多いです。

これは、上で紹介したように、カトリックでは罪を軽くするという理由で信者から多くの金銭を集めていたため、資金が豊富だったことが要因の一つと言えます。下の画像はカトリック教会の内装です。

そして、カトリック教会内には「懺悔室」が存在します。それに対し、プロテスタントでは誰でも直接罪の赦しを神から受けることができるので、懺悔室は存在しません。さらに、キリストがはりつけにされている十字架はカトリック、十字架のみのものはプロテスタントという違いもあります。

だからといって、カトリックで神以外のものも拝む「偶像崇拝」が認められているわけではありません。これは「キリストや聖母マリアを通して神に祈る」という意味であって、その像自体を拝んでいるわけではないのです。

プロテスタントでは聖書にある「あなたは自分のために、刻んだ像を造ってはならない」という言葉を重要視するため、キリストや聖母マリアの像を見ることはありません。このように、マリア像の有無でもどちらの教派なのかを見分けることができます。また、日本では教会の呼称で「○○天主堂」となっている教会は、カトリック教会だということです。

日本では昔、神様のことを「天主」と呼んでいたため、教会は「天主堂」と言われるようになったのですが、日本にキリスト教が入ってきた当時は、まだプロテスタントが存在していなかったため、天主堂は全てカトリック教会となっているのです。

●十字をきる動作
カトリックでは十字をきりますが、プロテスタントではその動作はありません。これも、プロテスタントがカトリックから分離する際に、聖書にないことは排除しようという考えから十字をきらなくなったと言われています。
 


 

カトリックとプロテスタントの違い・まとめ

カトリックとプロテスタントの違いを色々ご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?以下は、上で紹介した違いを表でまとめました。

カトリック プロテスタント
別の呼称 旧教 新教
聖地・聖地巡礼 あり なし
聖職者敬称 神父 牧師
聖職者性別 男性のみ(修道女) 男女
聖職者婚姻 ×
聖職者階級 あり なし
聖書の注釈 あり なし
影響力 神→教会→聖書→信者 神→聖書→教会・信者
儀式 ミサ 礼拝
宗教歌 聖歌 讃美歌
教会 豪華 シンプル
彫像 あり あまりない
懺悔室 あり なし
十字架 キリストあり 十字架のみ
聖母マリア 像あり 像なし
日本の教会 一部「天主堂」 ほぼ「教会」
十字をきる する しない

同じキリスト教でも教派が違うとこんなにも多くの違いがあるのは驚きですよね。色々な考えがあると思いますが、キリスト教信者でない私は、教派によって違いがあるということだけは理解し、もし何かの機会にキリスト教の儀式に参加することがあった場合は失礼がないように、基礎知識だけは覚えておこうと思います。

その中でも、一番参加する可能性が高い儀式と言えば「葬儀」ではないでしょうか?仏教徒が多い日本ですが、その仏教のお葬式でさえ、作法や決まりを忘れがちです。あまり縁のないキリスト教となれば、何をどうしていいか迷ってしまいますよね。
 

 

こちらでは、いざキリスト教の葬儀に参列することになった時に便利な知識をまとめて紹介しています。もちろん、カトリックとプロテスタントで違う点もちゃんと書いてありますよ。ぜひ参考にしてみてください。

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