ライターのMichelleです。
私事ですが、先日身内に不幸がありました。
仏教のお葬式でしたが、今までに参列したことのあるものとは宗派が違い、分からないことや戸惑うことが多くありました。
読経の途中どこで手を合わせればいいのかが分からなかったり、焼香の作法が私の知っているものとは違ったり・・・なじみのある宗派であれば間違いなくできそうなことも、ちょっと作法が違うとなると自信も持てず、落ち着きませんでした。
その時に思ったのが「同じ仏教でも宗派が違うと困るのに、宗教が違ったらもっと困るなぁ・・・」ということです。
実は私、学生時代にキリスト教系の学校に通っていたんです。
そのため、クリスチャンの友人もいますから、将来的にキリスト教のお葬式に参列する機会がないとも言えません。
キリスト教の宗派といえば、一般的によく耳にするのはカトリックとプロテスタントです。この2つ、何がどう違うのでしょうか?
その違いはお葬式にもあるのでしょうか?
誰かに聞きたくてもなかなか聞くことができないお葬式の話・・・。
葬儀の場で戸惑うことが多かったり、間違った作法で恥ずかしい思いをしてしまうと、故人を偲ぶ気持ちも半減してしまいます。
事前にある程度知識を入れておくだけで心の持ちようも変わり、故人とのお別れに思いをはせる時間を多く持つことができるようになります。
そこで今回は、キリスト教カトリックの葬儀マナーについて調べてみました。プロテスタントとの違いについても紹介します。
目次
通夜の集いで気をつけることとは?プロテスタントとの違いは?
仏教で通夜にあたるものを、カトリックでは「通夜の集い」と呼びます。しかし仏教とは違い、キリスト教の葬儀は人が亡くなってから始まるのではなく、臨終の際から執り行われることになっています。そのため、臨終の時が近づくと神父が呼ばれます。
キリスト教では「死=終わり」という考え方ではなく、「死=永遠の命の始まり」という考え方をするため、臨終の前後はとても重要な意味がある瞬間になります。神父は臨終の際に呼ばれると、危篤になった人の額に聖油を塗る「病者の塗油」の儀式を行います。そして、その方が臨終の時を迎えたら「臨終の祈り」を捧げます。
その後、「通夜の集い」が執り行われ、そこでは聖歌の斉唱・聖書の朗読・神父による説教・献香・献花などが行われます。仏教のように特にしきたりはなく、自宅や教会などで神父とともに祈りを捧げます。これは、元々キリスト教には「通夜」というものがなく、日本の風習にならって始められたためです。
そのため、故人が生前好んでいた聖歌や、故人らしい祈りの言葉が選ばれることが多いようです。通夜の集いが終わると「茶話会」が行われます。この茶話会では仏教の葬式とは違い、お酒はふるまわれないので注意しましょう。また親族にご挨拶する際は「お悔やみ申し上げます」と言ってはいけません。
上で説明したように「永遠の命が始まる=決して悲しいことではない」という考えがあるため「ご連絡いただきありがとうございます」や「安らかな眠りをお祈り申し上げます」などと言いましょう。通夜の場でのカトリックとプロテスタントとの違いとしては、以下の部分が異なります。
カトリック | プロテスタント | |
聖職者の呼び方 | 神父 | 牧師 |
通夜の呼び方 | 通夜の集い | 前夜式 |
式の最中に歌われる歌 | 聖歌 | 賛美歌 |
カトリックの葬儀の流れとプロテスタントとの違い
カトリックでは、故人は神にゆだねられると考えられています。そのため、葬儀ではキリストの再臨と死者の復活が願われることになります。また、葬儀は主に教会で行われるため、葬儀のために棺を自宅や病院から教会に運ぶ必要があります。棺を移動させる際には神父を呼び、出棺式を行います。
出棺式では神父が出棺の祈りを故人に捧げ、遺族は最期のお別れをします。遺影と棺は出棺式のあと神父に導かれ、葬儀が執り行われる教会に運ばれます。カトリックの葬儀は3つの儀式(入堂式・ミサ聖祭式・赦祈式=しゃとうしき)からなっており、一般的な「告別式」というものはありません。
また、3つの儀式のうちミサ聖祭式は洗礼を受けたカトリック信者だけのものとなっていますので、故人が洗礼を受けていない場合には省略されることになります。ただ、これは正式な葬儀の場合であり、一般的に日本で執り行われるカトリックの葬儀では、仏教などと同じように告別式も行われています。
では、実際に行われるカトリック式の葬儀と告別式の流れをご紹介します。
カトリック葬儀の流れ
◎入堂式
聖歌が演奏される中、十字架・司祭の先導により棺が教会の聖堂中央に運ばれます。祭壇に足が向くように遺体を安置し、棺の上に花で作られた十字架・周囲に6本の燭台と花が飾られます。司祭と参列者により交互に祈りのことばが唱えられたら、祭壇と棺に水をまき司祭により「入祭のことば」が述べられます。
※司祭とは、カトリックにおける神父の階級名です。
◎ミサ聖祭式
故人がカトリック信者の場合のみ執り行われるミサ聖祭式は、カトリックでは最も重要な儀式となります。司祭が従者とともに「死者のためのミサの祈り」を唱え、参列している信者もともに唱和してキリストへの感謝を捧げ、故人の安息を祈ります。
このミサには「聖体拝領」という、キリストの体となったとされているパンとぶどう酒を食する儀式も含まれますが、信者でない参列者は静かに儀式を見守ることになります。
◎赦祈式(しゃとうしき)
故人の生前の罪を許してもらうことを神に請い、天に帰り安息が得られるように祈るための儀式です。故人がカトリックの信者でない場合は、ミサ聖祭式が行われないため、この赦祈式が葬儀となります。司祭が祈りをささげた後、参列者とともに聖歌を斉唱、香炉と聖水を持った侍者を従えた司祭が棺の前で聖水をかけながら故人の罪を清めます。
その後、香炉を持ちながら棺の周りを歩き、故人の安息を祈ります。司祭が祈祷を行い、参列者とともに聖歌を斉唱して儀式は終了となります。こちらの動画では、カトリックの葬儀ミサで歌われる聖歌を聞くことができます。
【主よみもとに 聖歌658 賛美歌320 5番まで弾き語り】
カトリック告別式の流れ
◎入堂式
葬儀と同じように執り行われます。
◎聖歌斉唱
告別式を執り行うにあたり、参列者とともに聖歌を歌います。
◎弔辞・弔電の紹介
故人の略歴が紹介され、会場に届けられた弔辞・弔電が読まれます。
◎献花
仏教で一般的に行われる「焼香」の代わりに、祭壇に白い菊やカーネーションを捧げる「献花」が行われます。献花の順は、喪主→遺族→親族→一般会葬者です。献花の手順は以下の通りです。
1.祭壇のところで係の人から両手で花を受け取ります(この時、花が右側になり左手を茎に添えるようにします)。
2.遺影に向かって礼をし、花を時計回りに回し祭壇に花の根元を向けて献花台に花を捧げます。
3.遺族・神父に礼をして席に戻ります。
一方、プロテスタントでは故人は神の元で安からになるという思想があります。そのため、プロテスタントの葬儀では神のために祈りが捧げられ、神には感謝を伝え遺族を慰めることになります。そして、葬儀と告別式は分けることなく一連のものとして執り行われるという違いがあります。
カトリックのご香典袋の選び方・書き方・相場
仏教のお葬式につきものの香典ですが、キリスト教でも同じような習慣があります。カトリックの場合に、どのような香典を用意すべきなのかを紹介します。
◎香典袋
十字架のついているものはキリスト教の葬儀に用いられる香典袋です。ハスの花が描かれているものは仏教用なので、間違っても使用しないように気を付けてください。十字架のついている香典袋が見つからない場合は、白い無地の封筒で代用することができます。
また、水引が付いているものでは銀一色、黒白の結び切りを選びましょう。
◎表書き
カトリックの場合、香典袋の表書きは「御霊前」「御花料」「御ミサ料」のいずれかを書きます。それらの下に、姓名を記載するようにします。「御霊前」という表書きは、どの宗派でも使うことができるとされています。急な葬儀に駆けつける場合、相手側の宗派が分からないのであれば「御霊前」の表書きの香典を用意するようにしましょう。
◎相場
香典袋に包む金額は、仏教の葬儀の際と同じように考えましょう。
・仕事関係
上司:5,000~10,000円
同僚:3,000~10,000円
・身内:5,000円~
・友人:5,000~10,000円
故人との生前のかかわり・親密度に合わせて包む金額を決めましょう。香典に関して、カトリックとプロテスタントの違う部分は香典袋の表書きとなります。プロテスタントの場合は香典袋の表書きが「御花料」となります。
キリスト教の葬儀にはどのような服装で参列すればいいの?
葬儀の連絡は急に受けるものですから、「キリスト教の葬儀です」と言われても何をどのように準備すべきか分からず慌ててしまいますね。キリスト教の葬儀にふさわしい服装については、こちらの記事を参考になさってください。
葬儀の服装だけでなく、マナーや身につけるアクセサリー・バッグなどの小物まで詳しく解説しています。
まとめ
キリスト教、特にカトリックの通夜の集い・葬儀の流れやマナーについて紹介しました。突然の訃報を受けて参列することになる葬儀でも、明らかなマナー違反はいただけません。「知りませんでした」とは簡単には言えませんから、なんとなくでも知識として持っておくと安心です。
キリスト教カトリックの葬儀について、マナーや作法の面で仏教との違いは多々あることがわかりましたが、葬儀で一番大切なことは、故人を偲び遺族の気持ちに寄り添うことだと思います。事前にきちんとした作法を知ることで、急な葬儀の場でも故人に対して心からのお別れの気持ちを伝えられることでしょう。